労働者派遣事業の許可申請時に必要な条件とは?ポイントを分かりやすく解説

労働者派遣事業とは

労働者派遣事業とは、自社で雇用している労働者を顧客企業へ派遣して従事させる形態の事業のことです。

以前は「特定派遣事業」と「一般派遣事業」の二種類がありましたが、法改正によって特定派遣事業が廃止されたため、現在では一般派遣事業のみとなっております。

労働者派遣事業を行うには厚生労働省の許可が必要になっており、その許可を得るためには所管の労働局へ申請書類を提出する必要があります。

労働者派遣事業の許可申請の方法

労働者派遣事業の許可申請の手順は以下の通りです。

  1. 事業計画の立案
  2. 事業所等の準備
  3. 派遣元責任者講習の受講
  4. 申請書類等の準備
  5. 都道府県労働局に申請
  6. 事業開始

申請~許可証の受領(事業開始)までは2か月~3か月程度かかるので注意しましょう。

労働者派遣事業の許可申請時に必要な条件

労働者派遣事業の許可申請時には、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 資産要件を満たしている
  • 個人情報管理体制が確立されている
  • 派遣元事業主・責任者が選任されている
  • 特定の企業への派遣を目的としない
  • キャリア形成支援制度が設定されている
  • 事務所規模が基準を満たしている

それぞれの条件や必要書類について解説していきます。

資産要件を満たしている

労働者派遣事業の許可申請・更新申請時には、以下の3つの資産要件を直近の年度決算書で満たしていなければなりません。

  • 基準資産要件:基準資産額(資産額ー負債額)>2000万円×事務所数
  • 負債比率要件:基準資産額(資産額ー負債額)≧純負債額×1/7
  • 現金預金要件:現金預金額≧1500万円×事務所数

<必要書類>

  • 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書
  • 納税証明書(別表1および別表4、その2)

個人情報管理体制が確立されている

労働者派遣事業の許可要件を得るためには、派遣労働者の個人情報を適切に管理しなければなりません。
「個人情報適正管理規程」を定め、書類として提出しましょう。

<必要書類>

  • 個人情報適正管理規程

派遣元事業主・責任者が選任されている

許可要件を得るためには、派遣元事業主・責任者が適切に選任されていなければなりません。
欠格事由に該当していないか、適切な雇用管理を行えるかを確認しましょう。

また、派遣元責任者は、20歳以上で関連業務への従事経験が3年以上あることや、「派遣元責任者講習会」を受講済みであることが条件に挙げられます。

派遣労働者100名ごとに1名選出する必要があり、不在の場合の職務代行者をあらかじめ選任しておく必要があります。

<必要書類>

  • 定款
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 代表者・役員の住民票の写し(本籍地、または国籍&在留資格の記載があるもの)
  • 代表者・役員の履歴書
  • 就業規則または労働契約の該当箇所抜粋
  • 派遣元責任者の住民票の写し(本籍地、または国籍&在留資格の記載があるもの)
  • 派遣元責任者の履歴書
  • 派遣元責任者講習会の受講証明書(申請の受理日から3年以内のもの)

特定の企業への派遣を目的としない

労働者派遣事業において、人件費削減を目的として派遣会社を設置することを防ぐために、特定の企業に対してのみ労働者派遣を行うことは労働者派遣法で禁止されています。

キャリア形成支援制度が設定されている

許可要件を得るためには、派遣労働者がキャリアを形成するための支援制度を設定しなければなりません。
主にキャリアコンサルティングの相談窓口を設置していること、教育訓練の実施計画の作成などが必要です。

<必要書類>

  • 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等またはその概要の該当箇所

事務所規模が基準を満たしている

許可要件を得るためには、事務所の大きさや立地が基準を満たしている必要があります。

プライバシーを保護する個室などを有しているか、事業所面積がおよそ20㎡以上であることなどが条件です。

厚生労働省のHPに詳細な説明が記載されていますので参考にしてください。

<必要書類>

  • 賃貸借契約書(自己所有の場合は不動産登記簿謄本)
  • 事業所のレイアウト図

資産要件を満たすことができなかった場合

資産要件を満たすことができなかった場合でも、公認会計士の監査を受ければ許可要件を満たすことができます。

労働者派遣事業の申請には「監査報告書」が、更新時には「合意された手続き」が必要です。

監査報告書では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などといった全ての財務諸表を対象として監査を行います。

一方合意された手続きでは、主に財産要件に影響する項目を選択して確認するため、貸借対照表項目に限定されることがほとんどで損益計算書まで手続きは及びません。

ただし、労働者派遣事業の監査を行うことができるのは、原則的に企業と関係のない第三者の公認会計士のみとなっています。税理士や、当該企業の顧問を行っている公認会計士には監査報告書や合意された手続きを依頼することが出来ません。

また、監査報告書や合意された手続きを発行しても、その他の許可要件を満たせなければ労働者派遣事業の許可が下りないこともあるので注意しましょう。

まとめ

労働者派遣事業と労働者許可申請時に必要になる条件について解説しましたがいかがでしょうか。

資産要件を満たすことが出来なくても、その後の月次決算書で資産要件を満たし公認会計士の監査を受けると許可要件を満たすことが可能です。

ただし、監査を行うことができる公認会計士は原則的に当該企業と関係のない第三者でなければならないので注意しましょう。

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以上

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この記事を書いた人

新井 康悦

新井 康悦

クイノス総合会計事務所代表 公認会計士・税理士
有限責任監査法人トーマツ→上場企業 財務経理部長・IR部門責任者→クイノス総合会計事務所